【読書記録】父親になる、父親をする


父親になる、父親をする

著者: 柏木惠子
単行本(ソフトカバー): 72ページ
出版社: 岩波書店 (2011/6/8)
ISBN-10: 400270811X
ISBN-13: 978-4002708119
発売日: 2011/6/8
商品の寸法: 20.4 x 14.6 x 0.6 cm

       

岩波ブックレットからでている「父親になる、父親をする――家族心理学の視点から」を読んでみた。
著者は柏木 惠子さんで、2011年6月 第1刷発行と新しい本です。

岩波ブックレットのため、とても薄くて(全71ページ)通勤時間2時間もあれば読み終えることができるにもかかわらず、なかなか中身が濃いのでお薦めです。

Page.34
父親の育児不在は母親の育児不安を高める一方、逆に、母親を子どもの教育にのめりこませることにもなりがちです。自分だけに育児責任が任されていると、失敗は許されないとの思いにかられ、子どもに対して過度に介入することにもなりやすいのです。(途中省略)子どもが複数いた場合には、「できるだけのことをしてやる」と思っても、親の愛情は分散され、過剰な介入は起こりにくくなります。しかし、子ども一人に過剰な愛情が降り注がれることになれば、子どもの「育ち」を阻害することになりかねません。

Page.36~
子どもにとって「重要な他者」とは
親子関係といえば、その中心は母子関係であり、(途中省略)子どもは母親との一対一の関係の中で母親への強い愛着を築き、この絆こそがその後の対人関係の基盤となると主張されます。(途中省略)一方で、「父親の出番は子どもが青年期を迎えてから」などと言われてきました。ところが、最近の研究では、この愛着理論の妥当性に疑義がもたれるようになってきています。

Page.38
赤ちゃんは自力では何もできない無力な存在です。しかし、他人の力を利用・活用することで、その無力さを補います。そのため、赤ちゃんにとって自分の要求や状況を敏感に察知してくれる応答的な人が必要であり、重要です。しかも、一人の人だけを頼りにしていては危険です。そのため、複数の人の力を活用し、それらに守られ、支えられて成長していくのです。すなわち、赤ちゃんは社会的ネットワークを作る能力を持っているのです。こうしたネットワークは、いわば「護送船団(コンボイ)」として赤ちゃんを周囲で見守り、必要になれば援助の手を差し伸べて支えることになります。赤ちゃんにとっての、「重要な他者」群とも言えるでしょう。

Page.40
幼少期から「コンボイ」を形成する子どもにとって、父親の存在は大切です。しかし、子育てに関わることをせず、「コンボイ」の一員となっていない父親が、子どもが青年期になったからと、「さて自分の出番だ」と急に現れても、子どもが素直意に言うことを聞くとは思えません。子どもにとって父親が魅力的な存在に映らないからでしょう。(途中省略)一方、日頃から父親が子どもと密な交流をしている場合、子どもたちの評価は高く、「(お父さんのように)なりたい」「(お父さんのような人と)結婚したい」と答え、父親を魅力的な存在として認める傾向があります。

そりゃそうですよね~「青年期からがお父さんの出番」って虫が良すぎますよね(^^
「(お父さんのような人と)結婚したい」・・・うちの奥さんが言っていたことがあります。義父さん、すごいなー、イクメンだったんでしょうね。

Page.45
妻は感情を込めて、相手の関心や共感を喚起するように、詳細で具体的な話し方をします。これは「ラポールトーク」と呼ばれます。一方、夫は、簡潔明瞭に論理的な表現をし、これは「リポートトーク」と呼ばれます。これは、もちろん男女の生来的な違いではありません。生活体験の中で習得されるものです。主として職業生活を営んでいる男性には、論理的で簡潔明瞭な、かつ感情的ではないリポートトークが身につきます。一方、家庭あるいは地域で子どもや多様な人々と接している女性には、感情豊かで、話の内容も細かく具体的なラポールトークが身につきます。その結果、同じ日本語で話しているのにスタイルの違いから話は噛み合わず、どちらも相互にいらだっているのです。(途中省略)さらに、子どもに対してもリポートトークは有効ではありません。「こうだから、こうすべき」と理詰めで諭されても、子どもが納得するとは限りません。むしろ、子どものその時々の様子を見て、子どもがどんな気持ちでいるのか、何が理解できないのかを察知して、応答的に対することが会話においても重要なのです。

「子どもに対してもリポートトークは有効ではありません。」・・・これって、もしかすると「子ども」を「新卒の子」、「若い子」に置き換えることができるのかもしれない。「論理的」に説明しても話が通じていないようだし、あと「論理的」であるが故に彼らが納得できなかった時に、そこから先に話を進められないと感じることがある。

Page.54
育休を取る男性は元来子ども好きで、子どもと一緒の生活はどんなに楽しいかと思っていたようです。ところが、実際に始めてみると、思いがけず育児不安を体験することになったのです。いくら子どもをかわいいと感じ、子育ては大事と思っていても、社会との交流が遮断され、他の人の手も期待できない孤独な子育ては、大人の心理的安定を阻害するのです。これは母親・女性であっても、父親・男性であっても同じです。

なるほどね~

Page.61
家事・育児も(家庭での)労働ととらえると、実は、女性のほうが労働時間が長いのです。男性の労働時間は主に仕事ですが、職業を持っている女性の場合は、仕事のうえに(一人で)家事・育児もこなさなければならないからです。どころが、仕事と家事・育児とで長時間働いているから、女性が過労死した、などということは聞いたことがありません。一方、女性よりも労働時間は短いにもかかわらず、男性の過労死は社会問題化しています。(途中省略)労働時間の長さそのものよりも、どのような労働をしているかが問題なのです。仕事だけという、単一のことだけを長時間していると、仕事の能率も下がり、働く者の心身の健康も害してしまいます。一方、仕事と家事・育児という複数の異質な作業を行うことは、心身を活性化させ、精神的な健康も高めます。

主張の主旨は腑に落ちますね。
専業主婦と、兼業主婦(仕事もしている主婦)で比較した際に、専業主婦の方が育児ストレスが高いという話を聞いたことがあります。これも同じ理屈からなんでしょうね。男性も兼業主夫もしくは兼業ビジネスマンくらいの感覚でいたほうが良いんだと思います。
但し、著者が持ち出している資料が腑に落ちませんでした。「育児期夫婦の生活時間の国際比較」という資料で、日本の妻は仕事+家事+育児で10時間弱、夫は8時間強。そしてその内、夫の仕事時間は8時間!!。いやいや8時間ということは無いでしょう、短すぎです。そして過労死まで取り上げるのは極端ですし、男性と女性の労働時間を比較するほどの差があるとは思えません(少なくともこの引用資料では)

【目次】
第1章 父親になること、父親をすること
1.人間だからこそ必要な子育て
2.子育てを可能にする人間の「心」
3.養育するのは親だけではない
4.「進化の産物」としての父親
5.父親と母親は違うのか?

第2章 父親たちは、いま – 日本の現状をみる
1.「イクメン」というけれど
2.問われる子育ての中身 – 父親にとって子どもとは
3.子ども中心家族か、夫婦中心家族か – 子どもの誕生と夫婦関係の変化

第3章 父親として育つとき
1.妻は夫をどうみているか
2.子どもにとって父親の意味とは
3.父親として成長するために

終章 父親をすることが可能な社会へ

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